喉が詰まるかもしれないからと、どこにでも水筒を持ち歩く。会議で発言する前に、頭の中で何度もセリフを練習する。レストランでは出口の近くに座る。会話が少し途切れた瞬間にスマホをチェックする。
こうした習慣は、もっともな用心に思えます。認知行動療法(CBT)では、これに名前がついています。安全行動(safety behaviors)です。そして、この行動があなたの不安を静かに維持し続けています。
なぜ逆効果になるのか
安全行動とは、恐れている結果を防ぐために行うあらゆる行動のことです。問題は行動そのものではありません。問題は、その行動があなたの学びを妨げていることです。
いつも水筒を持ち歩いていて、喉が一度も詰まらなかったとき、脳は「水筒のおかげだ」と判断します。現実のおかげだとは思いません。恐れていた大惨事は一度も検証されないのです。認知行動療法(CBT)の不安維持モデルがこのループを説明しています。その行動が予防策のように感じられるため、脳は「危険はそもそも存在しなかった」という更新情報を受け取ることがありません。その思い込みは何年も残り続けます。これは意志の弱さではありません。脳がそういう仕組みになっているのです。
青年期の社交不安に関する実験では、安全行動を使った参加者(目を合わせない、言うことを事前に練習する、自分の振る舞いを常にチェックする)は、会話の相手から「より不安そう」で「好感が持てない」と評価されました。不安を隠すためのはずの戦略が、不安を増幅させていたのです。
安全行動は増殖もします。ひとつの予防策が「うまくいく」と、もうひとつ追加してしまいます。安全を感じるために必要なものリストは長くなり、それなしでの自信はどんどん縮んでいきます。
思い込みを検証する
安全行動を一夜にしてすべてやめる必要はありません。認知行動療法(CBT)での解決策は行動実験(behavioral experiment)と呼ばれます。まず、ひとつの安全行動に気づくことから始めましょう。
- 見つける。 不安を感じる場面をひとつ選び、その場面を乗り切るためにいつもやっていることに名前をつけてみてください。
- 実験する。 その行動なしで、一度だけその場面に臨んでみてください。予測していたことと、実際に起こったことに注目しましょう。
- ギャップを記録する。 起こると予測したことと、実際に起こったことを書き出してください。この二つの間の距離が、脳がアップデートを始めるポイントです。
ひとつひとつの実験が、安全行動では決して得られなかったものを脳に与えてくれます。それは、身構えていた大惨事が起こらなかったという証拠です。